「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回のテーマは「はじめての心電図」です。
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“心電図=取れているもの”
恥ずかしながら、大学病院の3年間、わたしのなかで心電図モニター(ここでは3点誘導)のイメージはこれだった。
オペ後の患者さんは必ずICUに入室。
心電図モニターがオフとなった時点で病棟に戻ってきたので、ほとんどの患者さんがモニターを付けていなかった。
既往により付けたままの患者さんがいたくらいだ。
しかも、消化器外科の患者さんって、オペ後の回復がすごく早い。
どんどん離床を進めるので、気がついたら心電図は外れていることが多かった。
患者さんも「これ邪魔なんだよね」なんて言いつつ、元気な自覚もあるから取っちゃう。
看護師も、何も言わなかった。
ナースステーションの画面に、きちんとした波形が出ていないのが当たり前。
そもそも、見ていない。
今思えば、不要なものはどんどん外してしまえばよかったと思う。
でも、そんなわたしたちでもちゃんとモニターを付ける患者さんがいた。
それはターミナルの患者さんだった。
しかしそれも、いつ心臓が止まってもおかしくない状態の患者さんに対して付けて、波形というよりは心拍数を見ているだけだった。
心拍数を24時間追っている感じ。
「だんだん落ちてきたねー」とか、そういう程度の確認方法しかしていなかった。
こんな感じでかかわっていたので、わたしには心電図のためになる話はあまりできないな、と思いました。
全部、教科書的というか。
なので今回は、心電図のエピソードでわたしが凄く印象に残っているエピソードをお伝えしようと思います。
ある末期がんの患者さんがいました。
30歳代の男性、まだ幼稚園くらいの子どもが2人いました。
ある日の夕方の時間帯、一気にモニター上(実測値も)HR40台まで下がり、急いで家族を呼びました。
家族は仕事や子どもの迎えなどで到着まで2時間ほどかかるとのこと。
その後すぐにHR20台まで下がっていったので、家族の到着までもたないかもしれないな、と思いました。
看護師は「いま、家族のみんなが向かっていますからね」とひたすら声かけを続けていました。
反応はなかったものの、HR30~40台まで上昇。
そこからHR20台になるたびに、家族の話をし、そのたびに同様にHRの上昇が見られました。
そして、家族の到着までの2時間、しっかりとHR20~30台をキープしていました。
ようやく、家族が到着。
その後、5分もたたないうちに、スッと旅立たれました。
父親としての強さ、夫としての強さを感じました。
耳は最期まで聴こえるというけど、このエピソードはまさにそれによるものかな、なんて思っています。
間に合ったのを確認して後輩と泣いてしまったのを覚えています。
ほんとうは心電図は読めなきゃいけないけど、末期の患者さんが多かったわたしの病棟はこのような使い方が主でした。
でも、これにより家族が最期に立ち会うことができたので、こういう使い方もまあ悪くはないのかな、なんて思ってしまいます。
//バックナンバー//
#001 はじめての尿道カテーテル
#002 なにがなんだかわからないケンサチ
#003 大きいからポケットには到底入らない
#004 家族じゃないからこそできること
#005 経管栄養とは
特別編 在宅は1人の感染が命取り
#006 自分にできることをやろう
#007 戦いは前日から
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fractale~satomi~
twitter:自由人ナースさとみ(@minisatominy)
三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。
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