「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回のテーマは「経管栄養」です。
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「経管栄養って、点滴よりもハードルが高い」というのが新人のときの印象でした。
新人看護師のときって、日勤で出勤したら患者さんの情報収集をして点滴のミキシングをする。その後モーニングケアをして、モタモタしてたらあっという間に11時を過ぎていた。ようやく一息つけると思ったら、検査や入院だと慌ただしく過ぎ、気がついたら配膳車が来てお昼という……。
そんなとき、先輩がいつも経管栄養の準備をしていた。誰がやるという決まりはなくて、手の空いた人が準備してたんですけど、新人のころなんて手が空くことがない。気がつけば「誰か」が経管栄養の準備をしていました。
ある日、プリセプターに「今日は経管栄養の準備をしましょう」と言われました。
どんな種類があるのかを事前に調べ、「滴下速度は?」「体位は?」などと聞かれても答えられるように頭のなかで何度もリピート。
「いざ!」いつもは先輩が立っている経管栄養を準備する場所へ移動。
今日の患者さんの経管栄養は、ジュースの缶のようなものをカンガルーポンプに入れる人が3人。ソフトバッグの人が5人ぐらいいた。
プリセプターに指導されつつ、ジュースの缶のような経管栄養のプルタブを開けて、注いでいるときにプリセプターが違う人に呼ばれてしまった。
「全部準備できたら待ってて」とプリセプターに言われ、一人ぽつんとたくさんの経管栄養の前に立たされる。
ソフトバッグのやつはチューブをつなぐだけだからいいんだ。
問題は「缶」。
これ、どこに捨てるんだ? 水でなかを洗ったあと、どこに捨ててるんだろうか……。
点滴などはミキシング台の近く、ガラスアンプルを入れるゴミ箱と、点滴のソフトバッグやチューブを入れるゴミ箱があった。ただ缶のゴミ箱は見たことなかった。
「え、これどうすれば……」
近くにプリセプターではない先輩はいるけど、記録中だし、ちょっと恐い感じの人だし、運悪くほかに誰もいない。
僕はこういう場面がほんとうに苦手。
ごまかせない性格なので、置きっぱなしにもできない。
先輩は……恐い。
悩みに悩んだ。
詰んだと思った。
もうこの世から消えたいと思った(笑)。
そんな絶望感がオーラとして出てたのか、記録中の恐い先輩が「準備できたの?」とパソコンの画面から顔を上げず、そっけなく聞いてきた。
「あ、はい。ただ……缶をどこに捨てればいいか、わからなくて……」
「缶? そこ置いておけば、清掃の人が持っていくから」と、相変わらず記録をしながら顔を上げずに答えてくれた。
「わかりました。ありがとうございます」
まじか……。置いておけばよいのか。この悩んでた時間を返してくれ!
この世から消えたいとまで思ってたのに(笑)!!
経管栄養は先輩がいつも準備していたから、「あそこはまだ行っては行けない聖地だ」と思っていたので、見ているようで見ていなかったんでしょうね。
まず困ったら、恐い先輩でも勇気を出して声をかける。
悩んでいる時間が無駄だし、自分なりに判断して間違えてしまうかもしれない。
そして「ナースステーションに聖地なんて無い」と自覚した、最初の経管栄養でした。
(ちなみに滴下などは問題なく行え、プリセプターから褒められたのも思い出です)
//バックナンバー//
#001 はじめての尿カテ
#002 大好きな検査値
#003 ナース服のポケットに忍ばせたメモ
#004 患者の死
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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ 9年目看護師(@c_mikzuki)
乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。
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