看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「はじめての急変対応」です。

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はじめて急変に遭遇したのは、看護師2年目。転職して新しく働きはじめた脳外科。完全に新人だった時期。
最初はほかの病棟でのコードブルー(スタットコール)。まだ仕事はプリセプターと一緒に動いてた4月のある日。とつぜん放送が流れ、プリセプターが「邪魔にならない程度に行きましょう」と走ってその病棟まで行った。

僕は「これはすぐに行かないといけない」とプリセプターよりも早く走り、階段も駆け上がり、その途中ではほかの病棟の人までも抜いて現場に行こうとした。
ただ、そのとき新人の僕は真っ先に行ったところでなんにも役に立たない。
案の定、現場に到着して自分のできることと言えば、走ってくる各病棟の人を病室の前で「こっちです!!」と大声で誘導することぐらい。

「新人のうちはアラームになれ(なにかあれば声を出して先輩を呼びなさい)」という教えがあったので、それはうまく守れたんじゃないかと思う。

狭い病室にたくさんの人たちがどんどん集まってくる。
よくわからないけど、みんな一生懸命動いているのを、病室前の廊下から眺めていた。「あー、コードブルーって本当にあるんだ」って思いながら。


自分がはじめて急変対応したのは、担当していた日勤が終わり、夜勤に切り替わって夕食が配膳されていたとき。
僕は記録を書くのが遅くて(正確には先輩がパソコン使うからなかなか記録できなかった。記録しようとしたら夜勤さんが来てしまったのでなにも書けてなかった)、ようやく椅子に座ってパソコンの前で記録をしていたとき。
夜勤スタッフが「誰かー!!」と叫んでいる。
「ん!? なんだ??」
めちゃくちゃすごい勢いでナースステーションを飛び出し声のするほうへ。
すると看護師さんが椅子に座位で座っている患者さんの背中を叩いている。体型の大きな男性の背中を、小柄な看護師さんが叩いている。


この光景を見たときから時間の流れがゆっくりになるのを感じた。


「ん? なに??」と思ったけど「これ、夕食が詰まって窒息してないか!?」と。
僕はとっさにその患者さんのベッドに飛び乗り、吸引チューブを手にし、集中配管の吸引バルブを全開に。
そしてチューブを患者さんの口に突っ込んだ。
患者さんの表情なんかはぜんぜん見ず、口ばかり見ていた。
いまだに歯並びを覚えているぐらい口を見た。
そして吸引チューブにどんどん吸い込まれるごはん。
そして「バッ」って音とともに、ものすごく大きなハンバーグが取れた。
その途端、口に「すー!!」っと空気が入っていくのを感じた。


ここまで、何秒だったか正確にはわからないけど、とにかくものすごい長い時間のなか、僕はあれこれやった。でも、たぶん5秒もしてないはず。

その後、夜勤の看護師さんから「ありがとう!本当にありがとう!」ってすごく感謝された。
それまでプリセプターの指導のもと、何もできないと思っていた自分が、なんとか対応できた。なんかすごくうれしかった。

先輩が声を出して助けを求めたから僕も駆けつけることができた。
でも、目の前で急変が起きると、言葉を失ってしまう。

自分が夜勤さんの立場だったら「声も出せずウロウロしてたかもしれない」と思うと、「新人のうちはアラームになれ」はとても大切な教えだなと思う。

//バックナンバー//

#001 はじめての尿カテ
#002 大好きな検査値
#003 ナース服のポケットに忍ばせたメモ
#004 患者の死
#005 はじめての経管栄養


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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ 9年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

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