特別編|いまこの時代に精神科看護師として働くこと|大事なことはぜんぶ臨床で学んだんだ|mizuki

看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は特別編として「今」を綴っていただきました。

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新型コロナウイルスの感染拡大にともない、医療従事者のみなさんはさまざまなところで「目には見えない驚異」と戦っていることと思います。
今のところ有効な薬やワクチンが開発されていないなか、新型コロナウイルス感染患者さんにケアをしているみなさんは、相当な苦労があると思います。命を守るために活動をされている方々、本当にお疲れさまです。

さて、今回はfractaleメンバーが「今をどのように感じているか、どのような日々を送っているか」を書く特別編です。「はじめての◯◯シリーズ」でお送りしてきましたが、今回は「今」を書いていきます。

僕がまだクリニックで働いていた1月ごろから、マスク、アルコール消毒薬の入手が困難になりはじめました。
僕は去年の11月に「またインフルエンザが流行するだろうからマスクとアルコール綿は買っておこう」と思ったので、クリニックで結構な数を購入しました。
しかし、その後から入手が困難に。
それを知っていたけど、「病院とかは仕入れルートが別にあるんだろうな」と思ってました。それこそ、長年取引している地元業者とかがあるだろうと。
そんな考えをしていたので、4月から病院勤務になった僕は「病院で働く安心感」があったのですが、現実はまったくどこも同じ。
病院でも必要物資がまったく手に入らないと聞きます。

僕が4月から働いているのは精神科単科の病院。
精神科に限らずどこの単科の病院も同じだと思いますが、専門は精神であって、身体的な疾患は違う病院で治療してもらうことが一般的なのです。
総合病院で働いていたときはその概念がまったくわからなかったのですが、例えば精神科単科の病院で意識消失が起こった場合は、救急車で近隣の救急に搬送することがあります。このように、身体的な疾患は精神科では対応できないことが多いです。

ですので、今回の新型コロナウイルスのような感染症も、基本的には直接精神科の入院になることはありませんでした。
そもそも、専門的な治療な使う器具はありません。陰圧室もありません。せいぜいモニター心電図ぐらいしか病院にはありません。
X線やMRIのある精神科は多いですが、感染症対策となると、ほとんど「ない」というのが、どの精神科病院でも言えることではないでしょうか。

正直、感染症対策としてはあまりに弱い精神科単科病院。
PPE(感染対策のための個人防護具)をつねに使用する場面もありません。
ガウンテクニック(防護具の着脱)も看護学校で習って以来、僕は経験していません。
そしてなにより、PPE自体の入手がとても困難だと聞いています。

日常的に感染患者を受け入れている病院ではないので、そもそもの在庫が少ないのです。
あるのはビニール手袋、ビニールエプロン、枚数使用制限のあるマスクぐらい。N95マスクも在庫は多少あると思いますが、ないに等しい。

とにかく、いま一番怖いのは「発熱」です。
発熱のある患者さんが入院してくるときは、個室対応とします。
そして感染対策として、その個室から物を持ち出さないよう、体温計、血圧計などはその人専用のものとします。
手袋、ビニールエプロンなども部屋にあるゴミ箱に捨て、外に出さないようにします。
せいぜい、この予防策が限界です。

受け入れる側としてもシミュレーションを行い、いつでも対応できるようにしていますが、物資もない、専門的な設備もない現状、「発熱のある患者さんが来ませんように」と心のなかで願っています。


あと、個人的には今後についても気になります。

数年前、日本人が外国で拉致され、殺害される様子が世界的にテレビで発信される事件があったのを覚えているでしょうか。
あのとき、「そのテレビを見てから落ち込みがちになった」「一日中恐怖に怯えている」という患者さんが何人も入院してきたことがありました。
今回の新型コロナウイルスの報道によって、前回の事件のような「不安が増してしまった」患者さんが今後増えてくるのではないかと思っています。

また今回は経済的にも深刻な影響が出ていますので、経営していたお店が潰れてうつ病になった、自殺を考えるようになったという方が増えてくると思われます。
あとは日中家にいるようになったために、飲酒量が増える人、通っていたが作業所が休みになり引きこもりがちになる人などが、今後受診・入院となるケースも増えると思います。


今は薬やワクチンがなく、誰もが戦う武器を持っていない状態。
立ち位置は同じですが、それでも陰圧室、人工呼吸器など(設備もノウハウも)がある病院は「防具」があるだけ、まだ患者さんの命を救えると思っています。

それすらもない精神科単科の病院は「ひのきのぼう と ぬののふく」で迫るウイルスに患者さんとともに戦うしかありません。


精神科単科病院に限らず、全国の医療機関のみなさん、日々使うマスクもアルコール消毒薬も不足しているなか、新型コロナウイルス対策をしつつ働くのは、精神的にもとても大変だと思います。
日々の通勤ですらあれこれ気にしてしまう現在。
新型コロナウイルスの脅威を封じ込めることが可能になったときには、「あのときは大変だったよね~」と言い合いながら、酒のつまみの話にしたいですね。

だって、僕たちは過去にたくさんの天災に見舞われても、乗り越えてきましたからね。 

いま僕たちにできることは、正しい知識を持ち、知識をつねにアップデートしていくことだと思います。

メディアのみなさまにもつねに正しい情報を提供していただきたいと思います。

2020年4月26日

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#002 大好きな検査値
#003 ナース服のポケットに忍ばせたメモ
#004 患者の死
#005 はじめての経管栄養
#006 新人のうちはアラームになれ


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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ 10年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

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