看護師兼ライターの白石弓夏です。

看護師として現場で働いていると、“継続的に学びが必要である”と痛感することがあります。大人になってからの『学び』は、自分のなかに落とし込み、現場で活用できるか、応用できるかが重要になってくると思います。みなさんは実際にどのように『学び』を深めているでしょうか。

この連載では、さまざまな場所で活躍されている看護師にインタビューを行い、自身の『学び方』について、一緒に考えてみようと思います!

今回は新生児集中ケアの認定看護師として働く、小堤恵梨さんです。

プロフィール:
2005年看護師免許取得。総合病院の新生児科にて勤務。2018年に新生児集中ケア認定看護師、取得。現在、横浜労災病院のNICUにて、小さく生まれた赤ちゃんや、病気を持って生まれた赤ちゃんの将来的な発達を踏まえた急性期看護を行っている。また、家族のスタートラインを応援、サポート。

白石>小堤さんは新生児集中ケア認定看護師の教育課程に進まれていて、勉強する機会が多いと思います。認定を取るにあたり、どのように勉強していたのですか?

小堤>教育課程が行われている学校では前年度の過去問が閲覧できるようになっていたので、閲覧予約をして学校で試験対策をしていました。過去問の内容は手書きでのみ複写可能だったんです。過去問を解いてみると、解剖生理・病態生理などの基礎的なところが多く出ていました。普段は、あまり意識していなかったというか、ちゃんと観察に役立てられていたかというと、あまり自信がないところです。そこで、私が弱いのはこの基礎の部分なのだろうと思い、『新生児学入門』という本を購入しました。疾患の勉強というより、赤ちゃんの身体の仕組み、基礎的な内容が詰まった本で、毎日読んでいました。

白石>入門書を最初から読むようにしたんですか?基礎に戻るのは大事だと頭ではわかっていますが、なかなかできることではないですよね。

小堤>はい、最初から最後まで何度も読みました。何ページくらいあるのかな……看護学校で買う一般的な教科書くらいの厚さです(編集部注:432ページ〔第5版〕)。普段の臨床現場で、ちょっとした調べ物をしたいときには選択しないようなバイブル的に扱われている本でした。普段は疾患についての解説書などを読むことが多かったですね。

事前にお伝えした質問に対して、回答を文書にまとめてインタビュー当日お持ちくださいました!


白石>本当に基礎中の基礎……私も苦手なところです。小堤さんは、本を読むと頭に入ってくるタイプなんですか。

小堤>わりと読むと頭に入りやすいタイプです。今まで「これはなんでこういう状態が起こるんだろう」と漠然と思っていたことがあって……。でも、この『新生児学入門』に答えが書いてあったんです。「赤ちゃんにはもともとこういう反射がある」という基礎的なことが、私のなかでときに抜けていたんですよね。それに気づかされました。当時は、「この子はこの疾患だから~」「こういう呼吸障害だから~」と、どうしても疾患に目が行きがちでした。

白石>なにか、こういう場面で「知識がつながった!」という、具体的なエピソードはありますか?

小堤>例えば、“一過性多呼吸症”という呼吸障害があります。この疾患の原因は肺水吸収遅延なのですが、帝王切開で出生した赤ちゃんが多いと言われています。それは産道を通るときの圧迫がないため肺水を排出できないから起こると思っていました。しかし、そのほかにも原因があると新生児学入門に載っていて。「あ~そうか!」と、自分の腹に落ちるものがありました。試験勉強としてそうした書籍を読んでいたんですが、実際の臨床現場で役立てられることもたくさん学べたと思っています。。

白石>患者さんとの場面を思い出しながら、あのとき解決できなかったことの答え合わせをする、臨床とつなげて落とし込むみたいな感覚ですね。

小堤>そうですね。実際、試験勉強といっても、認定看護師として働くうえで必要だから試験でも問われるのだろうと思いますし。

白石>認定看護師は、基礎というより応用編、中級者上級者向けの専門的な内容を勉強するのだと単純に思っていました。しかし、基礎を自分のなかにしっかりと落とし込んで、繰り返すことで本当に強い土台になるのではないか…と小堤さんの話を聞いていて感じました。また、基礎といってもアップデートが必要なこともあるでしょう。「基礎が大事」ということは、使い古された言葉のように感じていましたが、よくよくそのことを考えてみると、言葉の意味の重みを感じます。

後編では、小堤さんの現在の勉強方法、学ぶということについて聞いていきたいと思います。

//バックナンバー//

#001  自分の基盤にどうのせるかで学びを考える|吉岡純希さんと白石弓夏さん(前編)
#002  お互いの領域をリスペクトする|吉岡純希さんと白石弓夏さん(後編)
#003  わからないことを追求する奥深さ|小浜さつきさんと白石弓夏さん(前編)
#004  学生教育から学びを考える|小浜さつきさんと白石弓夏さん(後編)
#005  生きた話を聞く、学び方|落合実さんと白石弓夏さん(前編)
#006  学ぶのは誰のため?|落合実さんと白石弓夏さん(後編)
#007  映像で思い出せるように|中山有香里さんと白石弓夏さん(前編)
#008  失敗してもそこから気づくことが学び|中山有香里さんと白石弓夏さん(後編)
#009  自分の頭のなかだけで完結させない|中村実穂さんと白石弓夏さん(前編)
#010  目標達成までをイメージする、あえて自分を追い込む|中村実穂さんと白石弓夏さん(後編)




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白石弓夏
看護師兼ライター。整形外科病棟とクリニック、施設で働きながらライターとして活動中。ポジティブ思考、フットワークの軽さが強み。ライターとして情報収集、発信向けにTwitterをはじめたが、いつのまにか飯テロ垢と化したので、軌道修正中。
Twitter→https://twitter.com/yumika_shi