看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「看護師を辞めない理由」です。

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ちょっとダークな話かもしれません。
わたしは、なりたくて看護師になったけど、何度も看護師を辞めようと思ったことがあります。
だって、職場の雰囲気はギスギスしているし、若干クレーマーも増えているし、理不尽なスタッフもいるし。
夜勤で頭はボーッとするし、夜勤がないと給料なんてほかの仕事とさほど変わらないし。
年数を重ねても、業務負担が増えるだけで給料は変わらない。
命を守る現場なのに、たまに奴隷のような気持ちになる。
「この扱いはなんだろう」と、たまにとても虚しくなるのです。

そして、たまりにたまって「もう辞めてやるー!!」ってなって退職し、海外へ飛びます。
その期間は働かずに、とにかく遊びます。
不思議なことに、気ままに充電期間を過ごしていると、今度は患者さんや利用者さんのこと、いろいろな会話を鮮明に思い出します。
すると、また働きたくなります。
でも、いったん冷静に考えます。
「本当に“看護師”として働く……?」「またあのつらい現場で働く……?」と自問自答しながら就職活動を始めます。


経験したことのある人はわかると思いますが、就活中の看護師の資格は本当に強いと思います。

場所を選ばなければ、正直、すぐにでも就職ができるくらいどこも人が足りていません。
せっかくのフリーだし、ほかの職業とかも見てみるけど、看護師という資格・看護師としての経験しか持ち合わせていない以上、ほかの職種への転職はなかなか難しい。
できたとしても、年収が大幅に下がってしまいます。
それは、本当にきつい。

まだ正規雇用として働く気にならなかったとしても、看護師には派遣単発の仕事が溢れています。
ほかのアルバイトと比較してもかなり時給が高いので、派遣でも生活できてしまいます。
下手したら、週4日の派遣で日勤だけの仕事よりも月収が高い場合もあるのではないでしょうか。

となると、結局、看護師を選んでしまう。
なので、わたしの場合、“辞めない”というより、“生活のために戻ってしまう”、というほうが正しいのかもしれません。

これだけだと誤解されてしまいそうですが、看護師の仕事はやっぱり好きなんです。
利用者さんやその家族の方の笑顔や感謝の気持ちを受けてしまうと、もうそれだけで嫌だった思い出も消し去ってしまうんですよね。
転職回数の多さは、転職したことのない人からしてみたら、ネガティブなイメージがあると思います。
でも、わたしの性格や生活スタイルには合っているので、これからもこんな感じで“看護師”とともに生きていくんだと思います。

//バックナンバー//

#001 はじめての尿道カテーテル
#002 なにがなんだかわからないケンサチ
#003 大きいからポケットには到底入らない
#004 家族じゃないからこそできること
#005 経管栄養とは
特別編 在宅は1人の感染が命取り
#006 自分にできることをやろう
#007 戦いは前日から
#008 波形だけじゃないよ、心電図モニター
#009 大切な人
#010 Positioning
#011 丁寧に、確実に
#012 小さな気遣い、大きな違い
#013 訪問看護と教育
#014 オンライン学会に参加して
#015 いちばん苦手な時間
#016 だって、忘れちゃうんだもの
#017 クラシカル訪問看護

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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