「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回のテーマは「看護師を目指したきっかけ」を綴っていただきました。
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このテーマをいただいたとき、フラクタルを始めたときのことを思い出しました。
そういえば、メンバー紹介以外でのわたしのいちばん最初の記事はこれだったなあ、と。
このときは、1つのきっかけのみで書きましたが、じつはもう1つのきっかけがあります。
今回はどっちのきっかけにも触れて書いてみようと思います。
1つ目のきっかけは、フラクタルにも書いたように、【祖父の死】でした。
祖父が入院しているとき、わたしの家族は400キロほど離れたところに住んでいたのですが、ほぼ毎週面会に行っていました。
親族がアメリカにもいるので、アメリカからもたくさん面会にきました。
正直、両親、わたしたち姉妹はもちろん、病院に泊まり込んでいた叔母も、体力的にも精神的にもきつかった時期でした。
でも、当時の担当看護師は家族への声かけはほとんどありませんでした。
自分基準にしてはいけないけど、仮にわたしだったら、「遠くから大変でしたね」とか、「毎日泊まり込みで大変ですよね」とか、何かしら声かけすると思います。
「家族への声かけってこんなにも何にもないもの……?」と当時は思いつつも、まあわたしたちは健康だし10,000歩譲って、「まあいいか」と思うようにしていました。
でも、祖父本人への対応は許せませんでした。
体位交換のときも細い祖父をがっつり持ち上げてはばんってすごい音で落として、衣類を整えてるのか肩バンバン叩くし。
本人への声かけはないし。
それなのに、看護師同士は雑談しているし。
本人と家族の目の前で。
最期の最期の瞬間まで、こんな感じで、出棺のときまで「葬儀屋さんきました」とか、マニュアルどおりの声かけしかされませんでした。
もちろん家ではできないことなので感謝はしましたが、それ以上に
“冷たいな”
という印象が強く残ってしまいました。
少なくともわたしのイメージしていた看護師とは大きく違っていたし、そのときに家族側としてすごくつらかったのを覚えています。
そこで漠然とですけど、自分はそうなりたくないと思ったんですよね。
これが1つ目の看護師という選択肢が得られたきっかけです。
もう1つのきっかけは、ちょっぴり現実的なものです。
わたしの家族は、自分でいうのもなんですが、(ある意味)とっても素直に育てられたので、男性を見る目がありません(笑)。
なので、DVやハラスメント系の理由で離婚をした親族が何組かいます。
離婚して、子どもがいて、相手からの支援のない場合、本当に生活が厳しくなります。
生活が一変し、困窮生活を余儀なくされた叔母を間近でみてきたこと、祖母が口癖のように「女性も自力で生活できるくらいの力が必要だよ」と言っていたこと、それらによりわたしは【資格のある(守られる)】仕事に就くという選択肢が増えました。
これが2つ目のきっかけです。
化学が好きだったから薬剤師に興味があったり、英語が好きだったからCAに興味があったり、いろんな選択肢はあったけど、結局、看護師を選びました。
わたしのことだから、きっとどの仕事についてもそれなりに楽しむことができたんだとは思うけど、看護師になってから12年経ったいま、自分の周りにいる大切な人たちはわたしが看護師だから出会えた人であって。
そう考えると、看護師になるきっかけを与えてくれた、つらかった出来事たちも必要だったことなんですね。
人生って不思議なものです。
//バックナンバー//
#001 はじめての尿道カテーテル
#002 なにがなんだかわからないケンサチ
#003 大きいからポケットには到底入らない
#004 家族じゃないからこそできること
#005 経管栄養とは
特別編 在宅は1人の感染が命取り
#006 自分にできることをやろう
#007 戦いは前日から
#008 波形だけじゃないよ、心電図モニター
#009 大切な人
#010 Positioning
#011 丁寧に、確実に
#012 小さな気遣い、大きな違い
#013 訪問看護と教育
#014 オンライン学会に参加して
#015 いちばん苦手な時間
#016 だって、忘れちゃうんだもの
#017 クラシカル訪問看護
#018 生きていく手段
#019 万能なケア
#020 転職は転機になりますよ
#021 絶妙な力加減
#022 なんとかなる
#023 学生さんの力
#024 夜勤時の戦友
#025 仕事道具なのかはわからないけど
特別編 sick of COVID-19
#026 まだまだ書き足りない
#027 コントラスト
#028 意外だった参考書
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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy)
三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。
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