看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「新人のときに苦労した業務」を綴っていただきました。

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わたしがいちばん苦手だった業務は「輸血」でした。
まだ、前日から輸血することがわかっている場合なら心構えもできるんですけど、朝の採血を見て、突然「あー、今日輸血必要だね~」から始まる輸血だと、とにかく嫌でした。


輸血が決定したらあとは戦い。


まずは同意書の確認。
取れていると思っても、案外日付が抜けていたり、不備が多かったりするから油断できないのです。
そのほかにも、先生のIC立ち会いや、クロスマッチの採血、末梢の有無、なければどこにルート確保するか、ルート確保できなかったらどこから投与するか確認するなど、諸々の準備をします。
また、輸血が始まってしまうとつきっきりになってしまうため、ほかの受け持ち患者さんの対応をできるだけ終わらせておいたりフォロー体制を整えておいたりします。


輸血の準備ができると、検査科から連絡がきます。
ここからはWチェックの嵐です。
まずは、受け取るときに検査科の人と。
患者名、ID、血液製剤名、単位数、血液型、Lot番号、有効期限を確認し、問題ければ血液バッグを受け取ります。
冷蔵庫できちんと温度管理をされているので、ひんやりとしています。
専用のバッグに入れ病棟へ持ち帰ったら、今度は病棟で医師と同様内容をWチェックします。


そこから常温に戻します。
大事な血液製剤なので、リーダーに依頼することが多いのかな。
血液持ち歩きながらラウンドするわけにいかないですよね、見栄え的にも(笑)。


常温に戻ったらいよいよ患者さんのところへ。
今度は看護師同士で、本当にこの患者さん用の血液かをWチェックします。
同姓同名患者さんも多いので、患者さんのネームバンドと血液、オーダー表を照らし合わせながら、しっかりと確認します。
それをクリアして、ようやく投与開始です。
はじめはゆっくりと投与(1mL/m程度)、投与開始から5分間は必ず患者さんのそばにいて、副作用症状、バイタルサインのモニタリング。
このタイミングで起こる副作用は重篤となり得るので、必ずベッドサイドにいるようにします。
問題なければ15分後、速度をあげます(5mL/m程度)。
わたしは心配性なので、記録を書いたりしながら15分間はベッドの近くにいるようにしていました。
しかも、成人用ルートを使用するので、滴下を合わせるのにも慣れていなかったんですよね。
その後も30分に1度は訪室し、状態観察をします。
輸血投与が終わってからも、終了したことをWチェックする必要がありました。
無事に終わるとようやくわたしも安心できました。


慣れない新人のうちは、輸血そのものも大変だったけど、輸血をする患者さんは基本的に状態があまりよくないので、検査も増えるし観察項目も増えるし……さらに、Wチェックの相手探しにも苦労しました。
新人同士ではだめだったので、先輩を探さないといけなかったのですが、どの先輩も忙しそうだったし、医師に電話で連絡してWチェックのために病棟に来てもらうのも気が引けたし。
人探しにも苦労しました(笑)。
「患者さんが急変して対応することになったらわたしで対応できるかな」とか、もうとにかく、気持ちが落ち着かない!


まあでも、輸血翌日とかちょっと顔色良くなってる患者さんを見るのはすごいうれしいですよね(笑)。
治療効果が大きいぶん、やっぱり大変なんですね。

//バックナンバー//

#001 はじめての尿道カテーテル
#002 なにがなんだかわからないケンサチ
#003 大きいからポケットには到底入らない
#004 家族じゃないからこそできること
#005 経管栄養とは
特別編 在宅は1人の感染が命取り
#006 自分にできることをやろう
#007 戦いは前日から
#008 波形だけじゃないよ、心電図モニター
#009 大切な人
#010 Positioning
#011 丁寧に、確実に
#012 小さな気遣い、大きな違い
#013 訪問看護と教育
#014 オンライン学会に参加して
#015 いちばん苦手な時間
#016 だって、忘れちゃうんだもの
#017 クラシカル訪問看護
#018 生きていく手段
#019 万能なケア
#020 転職は転機になりますよ
#021 絶妙な力加減
#022 なんとかなる
#023 学生さんの力
#024 夜勤時の戦友
#025 仕事道具なのかはわからないけど
特別編 sick of COVID-19
#026 まだまだ書き足りない
#027 コントラスト
#028 意外だった参考書
#029 看護師を目指した2つのきっかけ
#030 みんなでひとつ
#031 困難ケースだってあるんだな
#032 ひとりの時間
#033 ワクチン接種への葛藤

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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