看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「看護師をめざしたきっかけ」です。

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私は社会人を経験してから看護師になりました。
看護師免許を取得したのが31歳のときです。

高校、大学とストレートに進み22歳の春に大学を卒業しました。
「経営学」を身に着け世の中で働こうとしたとき、不景気の真っ只中。
就職氷河期呼ばれる時代に突入していました。
大学に来る求人はほぼ0に等しく、自分の足で就職先を探しましたがどこにも採用されず。
実家を離れていた私は、ひとまず実家に戻ることに。
そしてハローワークに通い県職員の臨時職員の募集を見つけ、家から近い場所の臨時職員として働き始めました。
「大学4年生の新卒」という貴重な切り札をここで使ってしまった。
しかし、これがよいきっかけとなりました。
社会人として必要な対人マナー、文書の作り方、電話対応など身につけることができました。
この職場をきっかけに計3年間、臨時職員をしていました。


ある日、車で通勤をしているときに、ラジオを聞いていたら「思春期の子どもたちをサポートするボランティアをしませんか」という内容の放送があり、非行に走ってしまった子どもたちを支援するボランティアを大学時代にしていた私はすぐに応募。
あれよあれよという間にその団体の代表となりました。
しかし、なんの知識もない私。
たまたま養護教諭、看護師の多く所属する団体だったので、自分も看護師になって専門的な知識を身に着けたいと思い看護学校を受験するも不合格。
まあ、なんというか「看護師は向いてないな」ってこのとき思ったんです。
その後は看護師になろうとは思わず、臨時職員も期間満了し、昔から得意なパソコンの知識を深め、データベースエンジニアになったりしたのですが、誰もいない環境で開発するストレスから長くは続かず。


仕事をしたくないわけではないのに、仕事ができない自分に惨めさを感じつつ、将来について不安しかない日々。
そんななか見つけた派遣で老健施設の事務仕事をしていました。
デイサービスの送迎からレセプト作成まで、ありとあらゆることをしました。
ある日、利用者さんの体調が悪く、提携医療機関に看護師とともに車で送迎しているとき、同乗していた看護師からこう聞かれました。
「将来はどんな仕事したいの」と。

そのとき、むかし看護学校を受験した話をしたんです。
そしたら「えー、もう一回挑戦すればいいじゃない。無理なら無理でそこであきらめてもいいんだし。挑戦せずにあきらめるのはもったいないよ」と。
この言葉がとても胸に刺さり、すぐに受験できる看護学校を探し、応募。
親にはなんにも言わず、いつものように会社に行くふりをして看護学校を受験。
見事合格しました。
まさか看護学校を受験しているとは思ってなかった親はとてもびっくりしてましたね。

こんな感じで、子供の頃から憧れていた職業でもなく、ストレートで看護師になったわけでもない私。
でも、今の自分があるのは、過去のすべてのエピソードがあるから。
そう考えると、不思議なものですよね。

//バックナンバー//

#001 はじめての尿カテ
#002 大好きな検査値
#003 ナース服のポケットに忍ばせたメモ
#004 患者の死
#005 はじめての経管栄養
#006 新人のうちはアラームになれ
特別編 いまこの時代に精神科看護師として働くこと
#007 夜勤前のルーティーン
#008 入院時のルーチン
#009 看護師が伝える言葉の重み
#010 体位変換
#011 想像と違うオンコール
#012 好きな手技
#013 後輩が持つノートのサイズ
#014 時代がようやくついてきた
#015 自分の視点を伝えること
#016 昼間と夜間は仕事が違う
#017 「つながりは大切!」ってのはわかるんだけど
#018 看護師を辞めない理由
#019 やっぱり苦手な清潔ケア
#020 今度こそは看護師をしないぞと思う
#021 患者さんとのディスタンス
#022 自分は人とは違う
#023 たぶん人生でいちばん嫌だったとき
#024 看護師という運命共同体
#025 看護師1年目から使い続けているもの
特別編 そろそろ先が見えてこないかな
#026 僕が伝えたいこと
#027 たいへんなときのなかでの入職
#028 必死に受かろうとして手にしたもの

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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ10年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

about fractale
https://fractale3.com/mizuki/