看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「患者さんとの関係がうまくいかないとき」です。

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患者さんとの関係、うまくいくことのほうが少ないかもしれません。
看護師になって気がついたのですが、看護師の仕事というのは、想像以上に「サービス業」だったりします。
それだけ患者さんとかかわることが多いわけですが、それだけかかわるからこそ、かかわった数だけエピソードがあると思います。

正直、患者さんとの関係は「無理に築かなくても良い」と思っています。
相手も人間、私も人間ですから相性はあります。
それが言葉を通じたコミュニケーションだけではなく、意思疎通ができなくなっている患者さんともやっぱり相性はあります。
かかわった瞬間から感じることがありませんか?
「あ、この患者さんとは相性が合わない気がする」って。
昔はそういう「思い込み」はしないよう、患者さんにきらわれないように努力しました。
これは看護学校の実習の影響があるかもしれません。
実習って受け持ち患者さんからきらわれたり、拒否されると実習が続行できなくなるので、僕はそうならないよう、きらわれないようにがんばっていました。

けど、いろんな患者さんと出会って、無理に好かれようとするのは相手に対しても良くないことなんだなって気がついたんです。
僕は今精神科にいますが、精神科に転職した当初、僕のことをきらう患者さんがいました。
「なんできらっているんだろう」「僕の何がいけないんだろう」と葛藤する日々。
僕は好かれようと日々患者さんに近づいていました。
近づけば「私はきらいではありません」という誠意が伝わるかと思って。

ところが、です。
これが全然逆効果。
むしろどんどんきらわれてしまい、妄想のなかにも僕が出てきてしまい治療に支障をきたしてしまいました。
「あー、申し訳ないことしたな。僕は自分自身がきらっていないことを証明したくて近づいてたのに」と。
しかし、これ、ただの自分勝手な行動なんですよね。
ひとつも相手の気持ちになって行動していないことに気がついたんです。
そもそも、この患者さんは人とのかかわりをきらう患者さんでした。
なので僕もきらわれていてもいいやと思い、患者さんとの距離を遠くに置いて仕事していました。
すると、あるとき患者さんのほうから僕に声をかけてきて「あのときは、あなたが近づいてきたから怖かったんだ。これからはいろいろ話してください」と言われ、むしろほかの患者さんより良好な関係になりました。


関係性というのは必ず相手がいるもの。
どんな看護師も患者さんとの関係性に悩んだことがあると思うんです。
だから共感してもらえやすい。
ぜひ、悩んでいるなら、先輩や同期に相談してみてください。
案外悩んでいるのは自分だけではないことに気が付きますから。

//バックナンバー//

#001 はじめての尿カテ
#002 大好きな検査値
#003 ナース服のポケットに忍ばせたメモ
#004 患者の死
#005 はじめての経管栄養
#006 新人のうちはアラームになれ
特別編 いまこの時代に精神科看護師として働くこと
#007 夜勤前のルーティーン
#008 入院時のルーチン
#009 看護師が伝える言葉の重み
#010 体位変換
#011 想像と違うオンコール
#012 好きな手技
#013 後輩が持つノートのサイズ
#014 時代がようやくついてきた
#015 自分の視点を伝えること
#016 昼間と夜間は仕事が違う
#017 「つながりは大切!」ってのはわかるんだけど
#018 看護師を辞めない理由
#019 やっぱり苦手な清潔ケア
#020 今度こそは看護師をしないぞと思う
#021 患者さんとのディスタンス
#022 自分は人とは違う
#023 たぶん人生でいちばん嫌だったとき
#024 看護師という運命共同体
#025 看護師1年目から使い続けているもの
特別編 そろそろ先が見えてこないかな
#026 僕が伝えたいこと
#027 たいへんなときのなかでの入職
#028 必死に受かろうとして手にしたもの
#029 看護師からのひとことが決めた未来
#030 1人の人にかかわる人々
#031 自宅で過ごすということ
#032 オフになるフィールドを探す
#033 思い出の多いワクチン接種
#034 場数を踏むとできること
#035 3カ月を乗り切ったみなさんへ
#036 「木を見て森を見ず」にならないために
#037  人とのかかわりがこんなにもなくなるとは

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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ10年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

about fractale
https://fractale3.com/mizuki/